患者・家族メンタル支援学会 第6回学術総会

The 6th Annual Meeting of Society of Mental Support for Patient and Family (SMSPF)

ご挨拶

近年の科学技術の発展により、がんを始めとするさまざまな疾患の治療成績が大きく改善され、日本の国民平均寿命も延び続けています。その一方で心理・社会的問題はますます複雑化しており、医学の進歩にもかかわらず患者・家族の悩みはむしろ深くなっています。このような背景から「病苦を抱える患者と家族の心を支える医療行為に関する知識と技術を向上させ、診療とケアの更なる向上を図る」ことを目的として本学会は2015年1月に設立されました。
 
 本学会の目的を達成するためには、医療従事者自身の研鑽もさることながら、患者、家族を含めた社会的活動も必要とされます。そこで第6回学術集会では「患者・家族「経験」とメンタル支援」をテーマといたしました。その具体例として、がん患者・家族の悩みを病院外で語り・対話する場として活動を拡げている「がん哲学外来カフェ」と、医療の質の中の患者中心性指標としての「患者経験価値(Patient Experience:PX)」の二つの活動に焦点をあてて、シンポジウムを通じて紹介させていただきます。
 
 わが国の20年後の保険医療政策のビジョンを構想した厚生労働省懇談会「保険医療2035」においても、保健医療のパラダイムシフトとして「量の拡大から質の改善へ」「インプット中心から患者の価値中心」「行政による規制から当事者による規律へ」「キュア中心からケア中心へ」「発散から統合へ」という5つの流れが示されています。これらのビジョンを実現するためには医療従事者だけでなく国民全体の意識改革が必要とされ、「がん哲学外来カフェ」や「一般社団法人日本PX研究会」のような市民中心の主体的な活動が期待されます。そして医療従事者には積極的にこれらの活動と協働していくことが必要とされるでしょう。
 
 伊勢原市は丹沢を背景として、箱根温泉、湘南海岸にも近く紅葉の中で
週末をごゆっくりお過ごしいただければ幸いです。

患者・家族メンタル支援学会 第6回学術総会
総会長 安藤 潔
(東海大学医学部血液・腫瘍内科・教授)